身体に良いものと悪いものを探し出す検査技術
わたしたちの暮らしの多くは、植物や化学物質で支えられているといっても過言ではありません。地球上には約8万種類の化学物質が存在します。植物に至っては20~30万種あり、それぞれが6千種類の代謝化合物を含んでいます。しかしながら、その無数の物質のほとんどは未だに科学的な検査や解析がなされていない状況にあり、健康食品による健康被害も後をたちません。
たとえば、女性ホルモン様成分をうたった一部の食品や健康食品には環境ホルモン(外因性内分泌撹乱物質=疑似エストロゲン)に該当する製品が少なからず存在します。それにより、誇大広告とあいまって老若男女を問わず健康被害につながるケースも報告されています。これらの健康被害の多くは女性ホルモン様成分がヒトのエストロゲンの生理活性と違うことが要因の一つであると考えます。そこで、女性ホルモン様成分に生理活性があるかないか?また、生理活性があった場合、その解析値が環境ホルモンに該当するのか否か?を確認(DNAマイクロアレイ検査)することで、わたしたちの生活の中に存在する化学物質や環境ホルモンから健康被害を未然に防ぐことが可能です。
DNAマイクロアレイ検査とは
DNAマイクロアレイ検査は、ハードである検出装置とソフトであるチップから構成されます。ガラス基板のチップには、ヒト由来の細胞を用いて得られたヒトのエストロゲンの応答に関する遺伝子の情報が高密度に配置してあります。同時に検査の対象となる女性ホルモン様成分がヒト由来の細胞に与えた情報も取得し、基本となるヒトのエストロゲン情報とどのように違うのか比較します。
DNAマイクロアレイ検査による生理活性測定結果
DNAマイクロアレイ検査で得られた生理活性測定結果を相関解析という統計的手法を用いれば、相関係数と近似直線という2つの指標(横軸xにエストロゲン標準物質17β-estradiol、縦軸yにエストナE2による情報の変動をプロットし、散布図により比較)が得られますので、信頼性の高い評価が可能です。※下記、相関解析結果は一例として「エストナE2®」と「イプリフラボン」を掲載。
相関解析結果(L):「合成エストロゲン」
打点(合成エストロゲン)が、楕円(ヒトのエストロゲン)から外れており、近似直線(合成エストロゲン)も破線(ヒトのエストロゲン)と隔たっているので、エストロゲンとは異なる。
DNAマイクロアレイ検査は、従来の技術を応用した環境ホルモン(疑似エストロゲン)の生理活性を測定する検査技術です。産業技術総合研究所、東京大学医学部、埼玉県立がんセンターが共同開発したもので、2000年の日本分子生物学会年会で発表されました。また、製品の基礎となる論文は国際誌「FEBS Letters、Toxicology Letters、Current Pharmacogenomics」などにも公開されております。
<備考:製品の基礎となる国際誌論文>
Journal of Molecular Endocrinology 2002, Vol. 29, 175–192, 175-192
「エストロゲン活性測定用DNAマイクロアレイの開発」
Current Pharmacogenomics 2004, Vol. 2(3), 255-266
「エストロゲン活性測定法(総説)」
Environmental Health Perspectives 2004, Vol.112(7), 773-781
「DNAマイクロアレイを用いたエストロゲン活性測定法開発」
FEBS Letters 2005, Vol. 579, 1732–1740
「植物エストロゲンの研究」
Toxicology Letters 2006, 163(2), 130-41
「マイクロアレイを用いたエストロゲン活性測定法開発」
相関解析結果(A):「エストナE2®」
打点(エストナE2®)が、楕円(ヒトのエストロゲン)に収まっており、近似直線(エストナE2®)も破線(ヒトのエストロゲン)に近いので、エストロゲンによく似ている。